二重の魂

“二　重　の　魂”
ドッペルゲンガー


それは　自分であって　自分でない　像。
それは　どんな姿であっても　写されたものには　自分だって判る　なにか。

それは
会えば　程なく自分が　しぬと　約束される　なにか。
まるで　死を告げるもの　精霊や　死に神　の　ような　なにか。


この　魔界でも　かれいでぃあ　でも　ときどき現れる　なにか。
そして　会えば　敵となって　襲って　くる

ドッペルゲンガー
喪われれば　写し身となった　だれかもまた　死んで　きえる。



じゃくろ　も　おなじ。
―ーおなじ　だった　かも　しれない。



現れた　のは　じゃくろの　どっぺる。
白い　どっぺる　ふわふわ　どっぺる。
攻撃　なかなか　当たらない　でも　どっぺるの攻撃は　いのちを　削る。


まるで　幽鬼
まさに――幽鬼。


幽鬼も　捕まる。
幽鬼も　消える。
捕まればもろく　かき消える　幽鬼。


消えるを　あいずに　何かが　襲う。
まるで　モノクロの　手が　たくさんたくさん　伸びてきて
引きずり込まれるような　感覚。
どっぺる　と　いっしょに　じゃくろも　消え――



キエテ　タマル　カ
――ウバッテ　クラエ



ずるり……。



厭な音が響く。
引きずり込んでくる　モノクロの　手を　幽鬼のごとき　どっぺる　を
逆に　じゃくろの　中へと　引きずり　込む。
モノクロ　の　何かを　捕え返し　喰らって飲んで　起き　あがる。



じゃくろが　消える　まぬがれたのは
おそらく　じゃくろが　しんだ　たましい　だったから。
いのち　なきもの　どっぺると　なにも　変わらない。
じゃくろも　また　存在しない　何も　ない
餓えた　幽鬼　みたいな　もの。




いつか　貴様は　後悔する――
――いつか　自分は　後悔する。

俺を　喰らった　そのことを――
――彼を　喰らった　そのことを。



今か　先か　しらない　なにか。
二重が　重なって　うっすら　響く。
小さな　静か　が　からっぽに　響いて　そしてすっと　消えうせた。